アフリカ・レポート 書評


俺が発展途上国に興味を持つようになった本。確か発売したとき、早稲田大学の戸崎先生がすごい勧めてきて、当時戸崎信者だった俺は勢いで買っちゃったんだった。そしてこれが契機でバックパッカーを始めるようになった。

浅く広くという感じで面白く読めた。文章も、流石というか、大変読みやすい。もっと本格的にアフリカを知りたい、という気にさせてくれる。

 例の名作『カラシニコフ』をものした元朝日のジャーナリスト(少し前に退社していたらしい)が描く、現代アフリカのスケッチ。もともと紙面で連載されていたときに目にしていたのだが、本書ではそれ以降の動きを加筆してある。
 所謂「失敗国家」で目白押しのアフリカ。そのような低い評価は、西欧的価値観による「レイシスト」的な評価にすぎないと、アフリカの為政者たちは自己正当化をしてはばからない。そのようなアフリカ側の反発は、どうやらアフリカ人特有の部族優先主義が原因のようで、自らが所属する部族の利益を最優先することが、部族の長には求められるのだという。

ジンバブエムガベは白人農場を暴力的に接収したし、ナイジェリアのビアフラ内戦から、最近の「優等生」ケニヤの部族紛争まで、この部族を重んじる価値観は根が深そうである。
 歌舞伎町にいるアフリカ人の多くがビアフラ系のナイジェリア人だとは知らなかった。主流の部族から日本に来ている者は、一人もいないらしい。
アフリカで会社を営む日本人のことについても触れられていて、目配りも良い。昨今流行の「社会起業家」のはしりであろうか。新書という紙数の限られた媒体で、アフリカという広大な地域について紹介するというのも大変な苦労を強いられそうだが、それにしては読み終わった後に満遍なくものを知った気になれる良著。

【参考:本解説】
豊かなジンバブエの農業を一〇年で壊滅させ、アパルトへイトを克服した南ア共和国を犯罪の多発に悩む国にしたのは誰か。中国の進出、逆に国を脱出するアフリカ人の増加などの新しい動きを追い、同時に、腐敗した権力には頼らず自立の道を求めて健闘する人々の姿も伝える。三〇年近いアフリカ取材経験に基づく、人間をみつめた報告。